ピトロクリの谷は秋の真下にある。十月の日が、眼に入る野と林を温かい色に染めた中に、人が寝たり起きたりしている。

ピトロクリの谷は秋の真下にある。十月の日が、眼に入る野と林を温かい色に染めた中に、人が寝たり起きたりしている。
十月の日は静かな谷の空気を包んで、じかには地にも落ちて来ぬ。と言って、山向こうへ逃げても行かぬ。
風のない村の上にいつでも落ち着いて、凝と動かずに霞んでいる。その間に野と林の色が次第に変わって来る。
酸いものがいつの間にか甘くなる様に、谷全体に時代が附く。ピトロクリの谷は、此の時百年の昔し、二百年の昔しにかへって、安々と寂びて仕舞ふ。
〜「現代日本文学全集第19編 夏目漱石」より「昔」〜
本日2月21日は「漱石の日」です。
1911年、文部省が夏目漱石に文学博士の称号を贈ると伝えたのに対し、漱石は「自分には肩書きは必要ない」として辞退したことに由来します。
1902年の秋、ロンドンに留学していた漱石はスコットランドのピトロッホリーという小さな村に10日間滞在しました。100年以上前の村の様子が、先の短編小説に書き残されています。
この小さな村に現存するウイスキー蒸留所は、エドラダワー蒸留所とブレアアソール蒸留所の2つ。
エドラダワーはシェリー系モルトとして人気で、バレッヒェンというヘビリーピーテッドタイプもリリースしています。現在のオーナーはシグナトリーヴィンテージ社、膨大なストックを持ち、全ての瓶詰めはエドラダワーで行われています。
ブレアアソールはそのほとんどがベルなどのブレンデッド用となり、シングルモルトとしてはUD社の花と動物シリーズ12年、その他ボトラーズからのリリースとなります。
この機に漱石やエドラダワー、ブレアアソールを手にとってみてはいかがでしょうか。
それでは本日もお待ちしております。

